PREMIUM GOLF
難易度全米NO1のホールにチャレンジ!!
KOOLAU Golf Club(Hawaii U...
文:武藤 一彦
写真:ゲーリー小林

日本では「東海クラシック」の常連でよくやって来たある年のこと。
その時の忘れられないエピソードがある。
例によってマシンガントークといわれるおしゃべりで陽気にプレーをする
トレビノが急に立ち止まると、「そうか、ここは日本だったっけ。いくら
ジョークを言っても笑ってくれないと思ったら、ここは日本だったんだ」
というと“もうしゃべるのや~めた”と一切しゃべらなくなったことがあった。
ラウンド後の記者会見でそのことが話題になったが、話は意外な方向へと
進展する。「俺の人生ほど寂しいものはないんだよ」とトレビノがしみじみと
語り始めるのだった。
「俺の人生は同じ名前の女をふたり妻にし、5人の子供をもうけ、あとは
ゴルフだけ。つくづく寂しい人生さ。そりゃ金は溜まった。事業もスリルが
あってさ、損ばかりしたがでも面白かった。生活を支えた兄弟には、神様の
ように素敵な男だと喜ばれたさ。生活の心配がなくなったからね。みんな
大喜びさ。しかし、それだけだ」

背中は見る見る丸くなっていた。床に目をおとし溜息までつくとさらに続けた。
「ダラスの家の応接間に大きなテレビがあるけどね、ゆっくり見たことなど
一回もないよ。テレビを見る時は腹筋や腕立て伏せ、そしてトレーニング
マシーンにぶら下がっている時だけ。疲れてソファーで寝る。そんな生活さ、
寂しいだろう?」
妻の名前はクラウディアさん。17歳で結婚した最初の妻と、再婚した妻も
同じ名前だった。
メキシコという貧しくとも明るい国が生んだ型破りな天才ゴルファー・トレビノ
ゆえに、その底抜けの明るさは似合って見えた。
だが、光があれば影がある、光は強いほど影は濃いことをその時あらためて
知った。 (End)
◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、
日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ殿堂
選考委員。1939年11月、東京生まれ。
◇小林 滋(こばやし しげる) ゲーリー・小林の名で知られる
日本を代表するプロゴルフトーナメントカメラマン。日本国内はもとより
世界4大メジャーなど数多くのプロゴルフトーナメントを取材。国内外の
トッププロとも親交が厚く、中でもタイガー・ウッズに最も信頼されている
カメラマン。これまでの収録枚数は20万枚以上。
Date:2010.08.18 Category:ゴルファー