ジャンボ尾崎、114勝に向けての飽くなき戦い!
この度の『ジャンボ尾崎将司プロ特集』の中でも目玉となるのが今回掲載する愛用クラブの特集です。特にジャンボ尾崎プロが大事に保管する歴代の愛用クラブは、ほとんどが刻印付きで、実際にジャンボ尾崎プロが数々のトーナメントで使用したモデルとして、これまでは門外不出でした。
武藤 一彦の「ツアー10大ニュース」その1
文:武藤 一彦
「石川 遼が賞金王になったのはラフが短かったせいだ!」
18歳の石川遼の世界最年少賞金王争いには23歳の池田勇太も
絡んで充実の日本男子ツアー。女子の賞金女王争いも最終戦まで
もつれこみ横峯さくらが逃げる諸見里しのぶを逆転した。世界では
タイガーの失墜、藍ちゃんの米ツアー優勝、ミシェル・ウィーの復活
とめまぐるしいほどのドラマが演じられた09年。そんな中から一味
違った「10大ニュース」を拾う。
先にお断りしておくが、根拠はない。独断、私見、直観とちょっぴりの
データ分析、ただしそれらを元にした取材に基づく。"あー、ゴルフって
そういうものなんだ"と感じていただければ、と思う。
09年、日本男子ツアーのラフは例年と比較すると約5センチは短かった。
通常、ラフといえば約10センチ。深くてサンドウェッジで出すだけの難しさ
が基本だったが、今季はツアー全体で半分の長さの5センチと本当に短かった。
地球温暖化、雨天が多く日照不足などの影響もあったが、例年の半分と短かった
のは「グリーンを積極的に狙う攻めのゴルフをさせたい」とする大会関係者
の意図があったからで、つまり人為的な現象であった。
ラフの長さ5センチ設定がアグレッシブなゴルフに変えた!
トーナメントはコース作りから始まる。最近の傾向はフェアウェイ幅
15ヤードから25ヤード、ラフもファーストカット、セカンドカット、
さらにヘビーラフと段階を付けるなど、プレーヤーのショットの正確さ
を求めた。また、ピンの位置もグリーンエッジから最短4ヤードとシビア
にし、高度なアイアン技術を求めた。しかし、あまりに難しいセッティング
だと選手も無理を避ける。刻むゴルフ、消極的戦略は頭脳ゲームのゴルフ
としては、それはそれで面白いが、そればかりでは飽きがくる。

09年はそんな時代の境目にあったと思っていいだろう。トーナメント
ディレクターや競技委員の間でそうした会話がここ数年、交わされ、結論
として「ラフを短くしラフからでもピンを狙わせよう」いわばラフを
"あきらめの場所"から"アグレッシブに攻める場所"への転換を叫ぶ声
が出たのだ。
ラフを短くするとボールが見える。ボールが見えれば誰でも打ちやすく
感じる。しかし、ボールが見えても5センチの草の中にもぐりこんだ
ボールはフェアウェイから打つようにはいかない。難しい。草の中にある
ことには変わりない。だが、選手の心理としては見えているボールを出す
だけという訳にはいかない。グリーンどころかピンの根元を狙いたくなる。
ラフの長さ5センチは、実は選手心理に付け込んだコース作りの側の
"罠(わな)"、すなわち魔の手だったのだ。
さて、その結果はどうだったか。まず石川である。石川は初夏の
「ミズノオープンよみうりクラシック」で今季初優勝し真夏の「サン・
クロレラ・クラシック」で2勝目、次いで9月の「フジサンケイ・
クラシック」で3勝目、10月、愛知の熱い太陽に照らされしっかりと
伸びた三好カントリーの「東海クラシック」で4勝目をあげた。ラフ
では定評のメジャー、「日本オープン」ではプレーオフで負けたが2位
だった。
クラブが振れればどこからでも攻める。石川のゴルフの真髄は攻撃
ゴルフ。ラフが長かろうが、短かろうが、攻める石川のゴルフは誰もが
知るところ。しかし、09年、18歳が賞金王になった要因を上げると
したら、競技委員会の決断と合致する。結果的に「ラフが短か過ぎたために
石川が賞金王になった」のである。
ゴルフは芝質で攻め方、打ち方が変わる!
トーナメントの難易度はラフの長さで一変する!

日本男子ツアーの見方の基本として私が目を皿にしてチェックするのは
毎年7月末の北海道・小樽カントリークラブの「サン・クロレラ・クラシック」
だ。小樽はグリーンだけでなくフェアウェイ、ラフ、ティグラウンド
とすべて、全面洋芝(ベント系)。いわゆる欧米仕様。小樽でしっかりした
ゴルフをやらないと世界に通用しないといわれる。
念のためにどう違うのか。日本の本土、九州、沖縄のコースと北海道では、
フェアウェイに生える芝の種類が違う。北海道はベント系、本土は日本古来
の野芝や高麗芝が多い。従来の日本の芝(野芝や高麗芝)はイネ科、北海道
や欧米の芝は麦科で、同じ芝でも全く異質であるということもある。
種が違えばすべてが変わる。「ベントはボールが沈みボールを上げにくい」
外国選手が「日本の芝はボールが浮いて打ちやすい」という言動とも一致する。

要するにトーナメントの難易度はラフの伸ばし方次第で変わってくる。
実は「サン・クロレラ」では08年までラフは10センチだったが、
09年、コンセプトを変え、従来の半分の5センチにした。「欧米に追い付き
追い越せと距離、ラフを難しくしたら選手が手堅く攻めるばかりで
トーナメントが重苦しかった。それで今回は5センチにしてみました」
と競技委員。この大会のコース設定、7,535ヤード、パー72は
日本最長コースで過去3年の優勝スコアは5アンダーを越えることが
なかった。だが、今回ラフのセッティングを変えただけで17アンダー
と大会レコードとなった。
そこで冒頭の独断の結論となった。
だが、以下の見方もある「ゴルフはラフがカギを握ることを知って短く
した。日本男子ツアーはそろって石川向きのコース作りをした。石川を
賞金王にしようと石川向きのコースを作ったのではないか」
いや、私が言うのではない。18歳の賞金王の理由づけができず苦し紛れ
にそういう人が多いということである。
次回は「女子ツアー、ドラマ演出の謎」をリポートしよう。
写真はalbaより
◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)
理事、日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ
殿堂選考委員。1939年11月、東京生まれ。
Date:2009.12.30 Category:コラム