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武藤一彦のUSPGAツアーリポート

 

セントアンドルースの「全英オープン」
石川メジャー最高位27位、
優勝は伏兵ウーストハイゼン(南ア)


 

 

2位に7打差をつけてメジャー初制覇した南アフリカのルイ・ウーストハイゼン

 


ショットで戦えた充実感と
ワトソンからのエール

 日本の賞金王、石川遼は2アンダーの27位、18歳の夏を自己メジャー
最高位で飾った。1860年、第1回大会が開かれてから今回が150周年と
なる「第139回全英オープン」は、7月19日、聖地セントアンドルースで
幕を閉じた。

 時代を飾るチャンピオンには南アフリカの伏兵、ルイ・ウーストハイゼン(27)
が予想外の健闘だった。ボビー・ロック、ゲーリー・プレイヤー、そしてアーニー・
エルスを生んだ南アフリカから4人目の“ジ・オープン”覇者となった。
 これまでは欧州ツアー1勝、世界的には全くの無名選手は27歳。10年前に
アーニー・エルスの「ジュニアゴルファー育成基金」が生んだホープの著しい
成長の姿だった。

2日目の午後、強風が吹き荒れプレーが一時中断となったセントアンドルースオールドコース。石川遼が1番のティショットをした後の出来事で、第2打地点で1時間以上も待たされた

日本勢で最上位となる27位でフィニッシュした石川遼

 上位食い込みを逃がしたものの、石川はメジャー挑戦6戦目で初のアンダー
パーをマーク、自己最高位でフィニッシュ、その成長ぶりを垣間見せた。
 石川も「ショットは文句のつけようがないくらい」と素直に驚きを露わにし、
「ショットで戦えたという充実感がある」と収穫を喜んで、好感を持てた。
 4日間でティショットに大きな乱れは見られず、短い難ホールでは今回のため
に準備した“0番アイアン”を使うなど、リンクスコースへの戦略も合格点。
沈着冷静で安定したプレーぶりは頼もしかった。
 難点を挙げるとすれば、ショートゲームで自身「パッティングは下手すぎる」
と切って捨て「ショートゲームの重要性を思い知らされた。ショットが乱れたとき
スコアを乱していてはいけない。今後重点的に磨いていきたい」と口元を引き
締めた。
 ショットだけでなくロングパットも冴えていたが、グリーンを外したあとの
ショートパットとピンそばについたチャンスのバーディパットのカップインの
確率が、残念ながら高くなかったのだ。

 予選ラウンドの2日間、同じ組で回った“新帝王”トム・ワトソンには
「そのままのゴルフでいくといい。自信を持ってやりなさい」と励まされた。
しかし、ワトソンも石川自身もショートゲームの重要性はわかりすぎるほど
わかっている。それがゴルフなのだ。
 ワトソンは知っている。それがゴルフであり、このあと、石川が世界に伍して
戦っていく上で修正すべき必要課題事項であることを。

 この後、セントアンドルースでの全英開催は2015年となり、そのため
60歳のワトソンにとってはこれが最後の聖地でのジ・オープン。石川と
ワトソンは肩を抱き合い別れを惜しんだが、5年後、石川はどんなプレーヤーに
なっているのだろう。成長した姿を見せてほしいものだ。

32年前の“日本デイ”フィーバー
ビッグウェイブの再来はいつか?

 さて、思い起こすのは1978年だ。石川にはこんなエピソードを知って
おいてほしい。
 日本の主力選手がこぞって出場した1978年大会もセントアンドルースで
行われた。日本勢は青木功が7位、尾崎将司が14位、そして中嶋常幸が17位と
史上最高に盛り上がった大会となった。

 初日トップに立った青木は2日目も首位だった。3日目にはついに首位を
ワトソンとイングランドのピーター・ウースターハウスに譲ったが、それでも
1打差の3位だった。「全英2回目の出場で優勝か」と現地も日本も、つまるところ
世界中が大騒ぎになったものだ。
 それだけではない。尾崎将司も2日目を終わって6位につけた。第3ラウンドでは
途中、中嶋もトップ10に顔を出して3人の日本人が大活躍する“日本デイ”。
セントアンドルースは沸きに沸いた。

 大会が始まってから、日本は何かと話題豊富な、いま思うと日本に追い風が
吹いた大会だったのだ。
 初参戦のベテラン杉原輝雄は、日本での日程調整に失敗したため練習ラウンドを
十分にできなかったのか、第1日に84を叩き155人中の最下位だった。
 アマチュアの倉本昌弘はマンデートーナメントで地区2位の成績を収めて
本選へコマを進め、「日本には体が小さいポパイがいた」と地元の新聞が書き
立てる大活躍を見せた。
 二人は結局、結果が伴わず予選落ちとなったが、中嶋の活躍は世界を驚かせた
ものだった。

 中嶋があの名物17番・パー4(通称ロードホール)ホールで「9」を叩いたのは
第3日のラウンドだった。トップ10に3人が名を連ね、世界中が驚きの渦に
あった17番。中嶋はこの難ホールを2オンに成功、大拍手を浴びた。
 だが、ファーストパットは強い傾斜にピンまで届かず、左手前のバンカーへ。
そのあとバンカー内から脱出するのに4回、結局7オン、2パットの9を叩いた。
しかし、最終日に奮起し17位と健闘、翌年の出場権を3人揃って獲得した。
 日本は、日本のゴルフは、そのとき世界へ“日本ここにありき”を史上初めて、
思う存分アピールしたものである。
 
 優勝はあの“帝王”ジャック・ニクラス。
 ジ・オープンに3回目の優勝、メジャー3順目のグランドスラムを達成した
歴史に残る快挙達成の陰で、日本のゴルフは大きな花を咲かせたのだ。
 石川にはさらなる成長を望みたい。日本の先人たちのエネルギーをぜひ受け継ぎ、
好結果に結び付けてほしいと願う。

頂点を目指す伏兵がひしめく世界で
“石川ここにありき”のアピールを大いに期待!

 優勝者ルイ・ウーストハイゼンは、ほとんど無名の選手だ。
「全英オープン」ではしばしば起きる大番狂わせで、さして驚かないが、
そのゴルフのたゆまざる成長スピード、したたかな成熟度、南アの真の強さには
脱帽だ。

 今回の部門別ランクを見てほしい。ウーストハイゼンの4日間のデータは
次の通り。
 平均飛距離319.4ヤードで4位。フェアウエイキープ率85.94%は1位、
パーオン率83.33%、8位。パットは4日間で121パット、平均30パット強
で3位。
 一方の石川は飛距離305.1ヤード、41位。フェアウエイキープ率79.69%、
7位。パーオン率76.39%、39位。そしてパット数127、平均31.8だった。

 南アの怪人、2位に7打差、ただ一人2けたの16アンダー。石川とは14打差
である。世界の大きさ、強さをしっかりと見せていた。
 石川は小技だけではなく、“大技”もさらに磨き上げなければならない。
もっともっと頑張ってもらう世界の大きさよ、なのだ。

欧州ツアー今季2勝目、ツアー通算6勝目をあげたウーストハイゼン

初日最小スコアの63で大会記録をマークしたマキロイは、通算8アンダーの3位タイでフィニッシュ

ゴルフの聖地で得た成果と課題をどう生かしていくのか? 石川のさらなる飛躍に注目したい

 3位にはアイルランドの21歳、ローリー・マキロイ。初日63で首位に立ちながら、
第2ラウンドの強風に弄ばれ80を叩いたものの、昨年の全米プロに並ぶ3位タイ
だった。
 韓国の全英アマチャンピオン、20歳の鄭進は、最終18番・パー4ホールをワンオン
してイーグルフィニッシュで、14位のベストアマを獲得した。

 世界は広く大きく、タレントは多彩である。
 石川遼よ! もっと急ぐのだ! 過酷な叱咤を送らねばならない。

写真は THE OPEN , GDO より
http://www.opengolf.com/ja-JP.aspx

 

◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、
日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ殿堂
選考委員。1939年11月、東京生まれ

Date:2010.07.23 Category:リポート