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2009ゴルフ日本シリーズ

文: 武藤 一彦
写真:ゲーリー小林

国内10年ぶりの優勝を最終戦で達成した丸山茂樹

 

日本のプロゴルフツアーの最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ
(12月3~6日)」は丸ちゃんの泣き笑いで幕を閉じた。
最終日、4打差4位からボギーなしの64、通算9アンダーで
首位に並んだ丸山茂樹が、韓国の若手の成長株、キム・ヒョンテ(23)
と4ホールにも及ぶまさに"死闘"のプレーオフに勝った。

大会8年ぶりの出場、日本ツアー10年ぶりの優勝、苦しかった
米ツアーを経て勝ち取った土壇場の優勝だった。ゴルフは何が起こるか
わからないといわれるが、この優勝で丸山の人生が大きな変転を見せた。
40歳の復活に感動がちりばめられた。

順風満帆の男が味わった
米ツアーでの初めての挫折!

「米ツアーに打ちのめされて帰ってきて、それでもなかなか
立ち直れなくて、もうこれで俺はお仕舞いなんじゃないか、
どうしたらいいのかと途方にくれたこともある」

40歳の引き締まった顔が突然くしゃくしゃっと崩れた。
こみ上げる涙を手先で何度もこすり取った。
 ホールアウト後は丸山の泣き笑いの一人舞台。笑う丸ちゃん
しか知らなかったから泣く丸ちゃんを見て驚いた。さまざまな
ことが脳裏をよぎった。

 2000年に米ツアーへ。ロスに拠点を置き、日本を捨てる
覚悟の長期遠征は3勝を上げ順風満帆。しかし、その後は成績
が上がらずついに昨年末に日本ツアー復帰宣言。今季は全戦に
出場したが、ついに勝てずにいた。

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優勝スピーチで思わず涙。それだけ丸山の苦悩は深刻だった。
 
 

 ゴルフはミスのゲーム。うまくいかないショットの修正と
取り繕いをいかにできるか、のゲームである。ナイスショット
ばかりを追い求め究極を目指すのはビギナー。熟練とは最悪を
乗り切る術を心得たもの。だからチャンピオンにはベテランが多い。

 丸山の破たんはゴルフが一気に飛ぶ時代に入った時、アメリカ
にいたことだ。パワーとひたむきな前進力。アメリカの力のゴルフ
は小兵には厳しすぎた。精神面にもタフさを求められた。

「遠征生活は寂しすぎた。予選落ちし、次の試合を待ちながら
たった一人、ファミレスで食事をしてごらんなさい、たまらないよ!
ツアーを戦うということは、そんな世界に耐えること、辛かった」
背中を丸めてのつぶやき。"打ちひしがれてるなあ"と一緒に唇を
噛んだものである。

 
道具の進化、コース設定の変化が
丸山のゴルフをどん底に陥れた!
 

ドライバーイップス。ダウンスウィングでクラブが下りてこない、
ゴルファーだけに起こる奇病にかかったのは4年前。原因はわからない。
過度の緊張と恐怖、一度かかると再発を防ごうとするトラウマ。
いずれにしろ厄介なことであった。

 今シーズンも引きずった。「ダウンスウィングでドライバーの
タイミングがとれない。クラブが下りてくると、硬直する。無理に
振るとボールはあらぬ方へ飛んでいくんだ」

 5月、ついにドライバーを2004年時の350ccの"ちびヘッド"
に替えた。460ccを上限とするドライバーヘッド容量がレベルの
現世界で時代に逆行する選択を行うほど追い込まれていた。
 フルショットすると曲がるドライバーショット。フルスウィング
を止めたのは8月だ。パンチショット、スティンガーショットと
いわれるコントロール主体に変えた。

「坊主な、ゴルフを始めた13歳のころ練習で1日の半分はパンチ
ショットを練習したよなあ」
父でコーチの護さんの発案で初心に一度かえることにした。
「振れば曲がる。怖いから目をつぶって振るとまた曲がった。
おやじの言葉にすがるところもあった」と丸山。200ccの
ドライバーの素振りからなじみ、8月の茨城・大利根の
レクサスカップから350cc。すべてパンチショットで通した。

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4ホールに及ぶプレーオフはまさに"死闘"だった。 
 
 

国内10年ぶりの優勝で
大きな変転を見せるはずだ!

 キム・ヒョンテとのプレーオフは東京よみうりCCの名物、18番パー3
を使って4ホールにわたった。互いに一歩も引かないで迎えた4ホール目、
二人はピン右サイドにこぼした。先に打った丸山のアプローチは
ピン上30㌢についた。キムは1㍍半オーバー、そのパーパットは外れた。

 勝って人が変わった。これまで張り付いていた虚勢が抜けていた。
「勝って笑うものと思っていたが、涙が出たことに驚いている」
といった。優勝カップを上げることはもうないのかもしれないと
覚悟していたとも明かした。

「米ツアー復帰?もう長旅は勘弁してください。40代のゴルフ
スタイルができつつあるという実感がでてきた。日本でもっと
強い自信を取り戻させてください」

 40代、ベテランは素直さも取り戻したようだ。泣き笑いを
知ってゴルフが見えた。そんな丸山茂樹を見て何かほっとできた。

 

◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントのテレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ殿堂選考委員。1939年11月、東京生まれ。

◇小林 滋(こばやし しげる)
ゲーリー・小林の名で知られる日本を代表するプロゴルフトーナメントカメラマン。日本国内はもとより世界4大メジャーなど多くのプロゴルフトーナメントを取材。国内外のプロとも親交が厚く、中でもタイガー・ウッズに最も信頼されているカメラマン。これまでの収録枚数は20万点以上。

Date:2009.12.08 Category:コラム