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文:武藤 一彦
写真:ゲーリー小林

LEGEND OF GOLFER   Tom Watson

世界を日本人目線で見せてくれた恩人

2010年の「全米オープン」で同組になった石川遼に気軽に話しかけるワトソン

石川もワトソンから多くのことを学んだに違いない

“練習を重ねて想像力を結果に結び付ける”

ワトソンから石川遼へのエール

 
 2010年秋、ワトソンに2時間インタビューする機会を得た。
 韓国で米チャンピオンズツアーが初めて行われたが、そこは新設の「ジャック・
ニクラウスGC(仁川郊外の新松島)」だった。
 そして、石川遼のことも話題になった。18歳と60歳は「全米オープン」「全英
オープン」で予選ラウンドを同組で回った。
 2009年の「全英オープン」で当時59歳のワトソンがプレーオフで敗れたとはいえ、
最古のトーナメントの最年長優勝記録の夢を運んだ。片やあの「中日クラウンズ」
で58、ギネス入りの快記録の若者だ。

 ワトソンは石川について「すばらしいイマジネーションを持った若者だ」と
ぺブルビーチの8番のセカンドショット、セントアンドルースのどこどこと、
印象に残った石川のショットを挙げて語った。
「ぺブルのセカンドは5ウッドのショット、クラブ選択、打ち出し角度、方向など、
風や芝の状況も含めた判断はすばらしかった。何がいいってあの想像力だ。
将来性があると思った。練習を重ね想像力を結果に結び付けて、いい選手に
育ってほしい」

 77年全英オープンのターンベリーの14番、82年全米オープンのぺブルビーチの
17番。ワトソンを優勝に導いたチップインこそ想像力から生まれた。想像から
創造が生まれるということだ。だから練習だ、稀な才能は練習で磨けと、
スーパースターはホープ石川に呼び掛けてくれた。
 その時、思った。本質的にこの人はゴルフにかけている、そして好きなんだ、
日本と世界を結び付ける“仲人役”を意識してやってくれているこの人こそ、
恩人というものではないか。
 日本人ジャーナリストは深くひたすら感銘を受けたものである。

2010年の「全米オープン」でキャディを務めた息子が風を読む仕草を見つめるワトソン

一瞬、勝負師から父親の顔になったその姿が微笑ましく映った

60歳を過ぎた現在でも米国のシニア、チャンピオンズツアーの中心的プレーヤーとして活躍している

 ミズーリ州カンサス。ワトソンが生まれ育ち、これからも一歩も離れない
拠点である。
 馬、牛、30数頭を放牧する牧場主、馬はアメリカ原産のクォーターホース3頭を
持ち、カッティング競技に出場するのがオフの日常だ。カッティング競技とは
牛の群れを馬で追い集め、所定の柵内に追い込む時間と内容を競う競技だという。
「牛を激しく追い、ひとまとめにしたら手綱から手を離し、あとは足の締め付けと
体重移動、そして馬との信頼感で柵へ追い込んでいく。馬から何度も落ちる危険が
伴うこの競技ではまだビギナーだが、面白くてたまらないんだ」

 この9月、61歳を迎えた。
 家族、友人、チャリティ活動。カンサスでの生活だけでもかなりの比重を占める
分厚い生活。そんな中で続くゴルフから何が飛び出すのだろうか。    (End)

2010年11月、「ダンロップフェニックストーナメント」に参戦のため

来日した際、会場に姿を見せた青木功と旧交を温めたワトソン

青木もチャンピオンズツアーを主戦場にしている

◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、
日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ殿堂
選考委員。1939年11月、東京生まれ。

◇小林 滋(こばやし しげる) ゲーリー小林の名で知られる日本を
代表するプロゴルフトーナメントカメラマン。日本国内はもとより世界4大
メジャーなど数多くのプロゴルフトーナメントを取材。国内外のトッププロ
とも親交が厚く、中でもタイガー・ウッズに最も信頼されているカメラマン。
これまでの収録枚数は20万枚以上。

Date:2011.01.14 Category:ゴルファー