文:武藤 一彦

石川遼の米ツアー遠征の3戦目となる「アクセンチュア・マッチプレー選手権」
は今週末、アリゾナ州のリッツ・カールトンGCで行われる。
石川遼の米ツアー遠征の3戦目となる「アクセンチュア・マッチ
プレー選手権」は今週末、アリゾナ州のリッツ・カールトンGCで
行われる。64人がマッチプレーで争う勝ち抜き戦は石川にとっては
初の体験となるが、闘争心とやる気が勝敗を左右する試合形式の
マッチプレーは、いまの石川にはもってこいの晴れ舞台。ひと花
咲かせるチャンスがありそうだ。

番狂わせが主役。マッチプレーほど展開を読みづらいものはない。
通常、強いものが勝つゴルフだが、その"常識"は通用しない。
1999年の第1回の勝者はジェフ・マガート(米)、次いで
ダレン・クラーク(英)、スティーブ・ストリッカー(米)。
大会の歴史をちょっと追うだけでもチャンピオンの顔ぶれは
意外な名前の選手に彩られる。ストリッカーは今でこそトップスターの
ひとりだが、第3回優勝の時は、世界ランキング110位以下、
決勝戦は36ホールマッチの体力勝負で選手が次々と出場辞退、
資格が転がり込んでぶっつけで出場し優勝してしまった。
64人が18ホールで争う短期戦、それがマッチプレー選手権。
展開のアヤは勝敗を運や流れといった実力を超えたところで左右する。
しかし、タイガーが本気を出しはじめた2003年からは強い
タイガーの伝説ができた。03年から2連勝、08年はスチュアート・
シンクを8エンド7で叩きのめした。
マッチプレーの勝者はダークホースか、真に強い者のどちらか。
これでおわかりだろう。タイガー不在の今回は石川にもチャンスあり、
なのだ。
プロアマ競技の予選落ちは仕方が無い
現時点ではマッチプレーの方が遼向き
前週のペブルビーチでの「AT&Tぺブルビーチプロアマ」
石川の予選落ちは仕方なかったと思っている。連日、3人のアマチュア、
それも俳優や企業の要人と気を使いながらの特殊な大会だった。
ゴルフさえ上手くやればいいだけではない、接待ゴルフのホスト
としての資質を求められる大会で、18歳の日本人プレーヤーには
正直、荷が重かった。チーム戦で気を使う、毎日、コースが違う、
夜はパーティ、まったく気が休まる時がもてなかったはずだ。
アメリカではその前週の「ノーザントラスト・オープン」で
3日目まで上位争い、最終的には32位に終わったが、日本ツアーの
賞金王の世界デビューとしては2重丸。問われた真価に答えたの
はさすがだった。

ペブルビーチは?これも経験、一回は通らないといけない世界だった
と思っている。人当たりが良く、誰とでもフランクに付き合える
ジェントルマンでなければ、この大会は乗り切れない。石川がそういう
選手に成長するまでにはもう少し、いやもっともっと日時が必要だからだ。
ちょっとテーマからはずれるようだが、あのマスターズチャンピオン
のマーク・オメーラが5回も優勝し"ミスター・ペブルビーチ"と
言われたものだ。オメーラはデビュー直後のタイガーをとことん
面倒をみた恩人のような男で、1997年大会ではタイガーと
デビッド・デュバルを下し話題となった。
脱線ついでに書くと、その1985年、初めて優勝したオメーラを
最後まで苦しめたのが新井規矩雄だった。ペブルビーチの最終ホール
でバーディパットを入れておけばプレーオフ。
新井にとっては惜敗の2位だった。昔もプロアマ形式で気を使った
だろうが、当時の新井は毎年、春先は必ず米国遠征し、その存在感は
すごかった。今の選手よりはるかに昔の方がしたたかだった、特に
日本人は。石川はその時間をいま過ごしている最中、あまり急がず
ゆっくり見守ろう、そういうことを言いたい。

さてこのマッチプレー選手権の話だが、石川は昨年ウエイティング
までして出場への意欲を見せた大会だ。昨年も「ノーザントラスト・
オープン」に出場、アメリカにいた。そこで欠場者が出るかと現地で
待ったが、結局、枠は回ってこなかったという経緯がある。
その意気込みたるや、見込みがあるということだ。
今季は世界ランキング上位、日本の賞金王として堂々の参加である。
努力と意気は必ず実るはずだ。"ゆっくり見守れ"などといいながら
舌の根の乾かないうちにこれである。
マッチプレー。今の石川にはもってこいだ。
力いっぱいボールを打ちたい。なんでも吸収してやってみたい。
ゴルフが面白くてしようがない。怖いものがない。
18歳が暴れる要素はゴロゴロとある。
09年はジェフ・オグルビー(豪州)がポール・ケーシー(英)
との36ホールの決勝戦を4エンド3で快勝して2度目のタイトル
ホルダーとなった。タイガーがいなければ今年も外人上位の大会となる。
遼よ、居場所は空いているぜ、思い切りぶつかっていけ!
写真はGDOより
◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、
日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ殿堂選考委員。
1939年11月、東京生まれ。
Date:2010.02.20 Category:リポート





