ゴルフの祭典“マスターズ” 遥かなるオーガスタ! その全貌をお見せします!!
No.15 から No.18 まで各ホールの特徴を紹介します。
武藤一彦のUSPGAツアーリポート
文・武藤一彦

2011年の初メジャー「マスターズトーナメント」は南アフリカの26歳、
チャールス・シュワーツェルが大逆転で制した。サンデーバックナインに十数人が
なだれ込む史上稀にみる優勝争いは、21歳のリロイ・マケロイ(北アイルランド)
を中心に展開、タイガー・ウッズ(米)、アダム・スコット(豪州)らが急追して
目まぐるしく首位が入れ替わったが、最終的にシュワーツェルが15番から4連続
バーディで抜け出した。
日本の石川遼は最終日2アンダー70、通算3アンダーの20位タイ。
アマチュアでただ一人、決勝ラウンド進出で注目の松山英樹は74、通算1アンダー
27位タイと健闘、日本人として初のローアマのタイトルを獲得した。
「同じ組のチェ・キョンジ(崔京周、韓国)とゴルフのタイプが同じでプレーしやす
かった。コースが私の力を最大限に発揮させてくれた。オーガスタに感謝したい」
シュワーツェルは静かに喜びを噛みしめた。確実にフェアウエイをとらえ、ミドル
パットをバーディにつなげた。あくまでタフな状況の中で終始マイペースを貫き通す
タフな神経が際立つ優勝だった。

ゲーリー・プレイヤー、アーニー・エルス、レティーフ・グーセンとメジャー優勝者
を生むゴルフ大国・南アフリカがまた新たなスターを誕生させた。
マスターズでは2008年にトレバー・イメルマンが並いる強豪を事もなげに退け
世界を驚かせたが、シュワーツェルはその驚きの消えないうちに、またもマスターズ
を勝った。わずか3年でニュースターを生む南アの層の厚さとしたたかさに改めて
世界中が震撼した。
マスターズでは1961年、ゲーリー・プレイヤーが外国人選手として初めて
タイトルを獲得。今大会はそれからちょうど50年目。歴史的なエポックを刻んだ。
優勝したシュワーツェルは26歳、2位のジェイソン・デイが23歳、15位に
沈んだが、63ホールまで首位を維持したマキロイを含め、今年は若いプレーヤーの
活躍が顕著だった。
日本は石川と松山がそろってアンダーパーフィニッシュ。
石川は3回目の出場で初の予選通過は遅すぎるきらいがあったが、内容は充実して
いた。この日は2番ホールパー5で80センチに寄せるバーディ発進したものの、
4番パー3で奥のブッシュに打ち込むダブルボギーと波乱万丈のゴルフだった。
しかし、上がり4ホールは見応えがあった。15番パー5はツーオン、16番パー3
は奥にこぼしながらナイスパーの後、17番パー4は2メートル、最終18番パー4
は3メートルを入れるバーディは鮮やか。
“いつか、優勝争いをする時にはこんなゴルフができたら―。”
そんな夢が膨らんだバーディフィニッシュだった。

松山はローアマ獲得。さすがに最終日はドライバーが乱れ、思うようにプレーを
させてもらえなかったが、最終ホールをバーディとした。歴代の日本人が苦手とした
最終ホールを何気なくバーディで締めるあたり石川も含め、ついに国際レベルの選手
が出現したか。うれしかった。
舞台のオーガスタ・ナショナルはトッププロには果てしなく難しく、しかし
ビギナーにも楽しめる点で名コースだと思うが、パー5はツーオンからバーディを
もぎ取り、難関のパー3は何とか切り抜ける、若い二人のしたたかさには新しい
日本人像が見えた。鬼に笑われそうだが、来年が楽しみだ。

外人勢では北アイルランドの天才、マキロイの成長が印象に残った。この日は
10番ホール・パー4でティショットを左に大きく曲げ、第3打も引っ掛けて
トリプルボギーでつまずいた。11番パー4は左の池ぎりぎりに立つピンを狙って
2メートルに付けたが、3パットして遂に糸が切れてしまった。
あのホールのセカンドでピンを狙う時、すでに冷静さを失っていたようだ。
優勝争いの中で、あの“ピンポジ”を狙うプレーヤーは彼だけだった。他の選手は
狙う人で真ん中、堅くいくならグリーン右に外すのが“正解”だった。マキロイは
罠にはまった。

豪州勢はアダム・スコット、デイ、ジェフ・オグルビーと3人が上位を占めた。
中でもスコットとともに2位のデイに引き付けられた。マスターズ初出場、メジャー
3戦目の23歳、勝てば1979年のファジー・ゼラー(米国)以来の初出場優勝の
偉業だった。
ドライバーの飛距離と正確性。アイアンの思い切りと的確なスピン量は天性だ。
「マスターズだけは勝てない豪州」という汚名を真っ先に晴らすのはこの選手と見る。



タイガーに勝運はいつ戻ってくるのだろうか。8番パー5でイーグルを決め、
通算10アンダー。しかし、そこから伸びなかった。13番パー5で2オンを逃し、
アプローチも寄らなかった。15番パー5は1メートルのイーグルチャンスのパット
も外した。眠れない夜が続くのだろう。

風も吹かず、波乱なし。珍しいマスターズだった。
スリリングではなかったということではない。穏やかさの中で目一杯やってみろ、
ゴルフの神様はそう言っていたように見えた。
硬くて速くて、時にアンフェア。ドローヒッター有利、飛ばし屋に甘いという声も
ある。しかし、穏やかなコンディションの中を思い思いのマイゴルフを展開する
プレーヤーを見るのは楽しかった。マイゴルフ、そう、自分のスタイルを思う存分
ぶつけた。優勝争いは、そして石川、松山も自分のゴルフを思う存分ぶつけた。
勝って驕らず、負けて爽やか。ゴルファーたちが初心にかえって次を目指す、
そんな潔さが漂うマスターズだった。

写真はPGA TOUR より
Date:2011.04.12 Category:リポート