世界のトップが初心にかえったマスターズ
2011年の初メジャー「マスターズトーナメント」は南アフリカの26歳、チャールス・シュワーツェルが大逆転で制した。サンデーバックナインに十数人がなだれ込む史上稀にみる優勝争いは、21歳のリロイ・マケロイを中心に展開、目まぐるしく首位が入れ替わったが、最終的にシュワーツェルが4連続バーディで抜け出した。
武藤一彦のUSPGAツアーリポート

文・武藤一彦
タイガー・ウッズの今季デビュー戦の米PGAツアー「ファーマーズ・
インシュランスオープン」は通算1アンダーの44位タイと“らしくない”
成績に終わった。
生まれ育ったカリフォルニア州。ジュニア時代から慣れ親しんだ名コース、
サンディエゴ市郊外にあるトーリーパインズGC。プロとなって6勝もあげた
相性のいいコースで期待したが、最終日、75と第3ラウンドの74に続き
オーバーパーのスコアを叩き、まったくタイガーらしさは見られずに終わった。
優勝したババ・ワトソン(米国)から15打差、2位のフィル・ミケルソンとも
14打差、タイガーに何が起ころうとしているのだろうか。


新コーチ、ショーン・フォリーとのスウィング改造は逆効果だったのか?
ショット、アプローチ、パットとも1日として噛み合った日はない。予選ラウンド、
惜しいパットを外しながらもアンダーパー、スコアボードの中位を占めていたタイガー
だったが、フェアウエイキープ率は低く、グリーン周りの巧みさで何とかスコアを
維持していた。
決勝ラウンドに入り勝負機運。いつもならここからがタイガーの真骨頂だった。
だが、逆作用する。ラフからラフを渡り歩く信じられないアイアンショットや、
自信を持って打つパワーショットがいきなり左へ飛び出す鋭いフックになるなど
自信のないルーキーのようなミスが連続した。
クラブを叩きつけ怒り、苛立つタイガー。最後までリズムは戻らなかった。
フォリーコーチとは昨年夏、コンビを組んだ。以来取り組んだ左ウェイトの
ニュースウィングは、タイガー復活のシンボルになるはずだった。
「安定したインパクトが迎えられる。練習を積み体調を整えれば結果は出る」と
満を持しての出場。期待感は誰あろうタイガー自身が自分に最も期待したが、
もろくも崩れた。
ブッチ・ハーモン、ハンク・ヘイニー。そして今回のフォリー。タイガーは脅威の
テクニックをそのエポックごとにコーチとともに作り上げてきた。しかし、今回は
ついにその効果は出ていない。
09年、膝の故障と手術。10年は不倫事件。タイガーにはもはや“外部の力”が
及ばなくなっているようだ。
つまり、上昇を続ける中でのコーチとの連携は、強固なまでの伝説を作り上げ
神話に近いところまで来て人々を魅了した。しかし、膝の故障、私生活の大きな
変化は選手生活を侵害し、大きく軌道を外れるところまで来た。
華やかで強固な伝説の中でつくり上げたばかりに短期間では戻れないところに
来ているのではないか。

タイガーがプロとなって11年目。タイガーは今、最悪に備えなければならない。
世界ランク1位の座をイングランドのリー・ウエストウッドに明け渡し、今年に
入って2位も欧州ツアーのマーティン・カイマー(独)に譲った。世界では3番手に
甘んじたタイガー、しかし、アメリカでは依然としてナンバーワン。
世界の大部分の「このままでは終わらないだろう」の期待。今回の「インシュランス
オープン」の乱れは復帰へのあせりではないか。生まれ故郷、負けを知らない実績、
しかし、ゴルフにそんな”データ“が当てになったためしはない。あくまでそんな
風に受け取った。
太い腕、大きなヒップ。かつてオーバースウィングとまで言われた柔軟な体躯は、
190センチの巨体をマッチョに変えた。何もかも変わり変化したタイガー。
苦難の道が始まった、と見えてしまう。
写真は PGA TOUR より
http://www.pgatour.com/
武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。報知新聞社運動部、
編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントのテレビ解説、コラムなど幅広く活躍。
日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会
委員、世界ゴルフ殿堂選考委員。1939年11月、東京生まれ。