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「武藤一彦の2009年ゴルフ10大ニュース」その2


文:武藤 一彦

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2009年最終戦で優勝した横峯さくら
 
 

 09年日本女子ツアーほどゴルフの面白さ、怖さを見たことはかつてない。
逃げる飯島茜を横峯さくらが追い上げ、逆転で優勝した最終戦「LPGAツアー
選手権リコーカップ」。この優勝で横峯は諸見里しのぶとの541万円差で
争っていた賞金レースで逆転を飾り、初の賞金女王の座についた。

 08年、古閑美保がやはり最終戦の逆転勝ちで逆転女王となったが、これで
2年連続のサプライズ。何かに憑かれたように繰り広げられる女子プレーヤー
の底知れぬエネルギー、予測のつかない展開には、"女の魔性"すら感じて、
魅了されっぱなしだった。

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JLPGA公式戦「リコーカップ」が開催された宮崎CC
宮崎県の日向灘に接するシーサイドコースで、特にコーライグリーンが選手を悩ませる
 
 
 

 だが、逆転劇は起こるべくして起こったと見ている。 宮崎・宮崎カントリー
クラブは1961年創立、松林と自然のアンジュレーションを巧みに取り入れた
シーサイドコース。そしてこのコースのグリーンがキーポイントとなった。
宮崎きっての名コースはコーライのワングリーン。あくまでタフな環境は選手
を弄び明暗を分け、その人生まで変えるのだ。

 

コーライグリーンは小さいクラブで
手前から攻める!を実践できた横峯

 

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最終日、9ホールを終わって首位だった飯島茜だったがコーライグリーンの魔の手に!
 

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ツアー最終戦を残し賞金レース首位に立っていた諸見里しのぶだったが、
やはりコーライグリーンの餌食となりビッグタイトルを逃してしまった
 
 
 

 最終日、横峯は首位から5打遅れ、ハーフを終わっても3打差もあり
飯島の逃げ切りかと思われた。だが、横峯の14番はグリーン手前右に
外したアプローチをチップインバーディ。

 これで流れを変えると、さらに15番、最難関のホールではセカンド
の8アイアンショットがショートしたと思った次の瞬間、手前マウンド
で跳ねたボールはカップの方向に転がり、ピンから20センチについた。
 ミスに見えるがミスではなかった奥深いショットは、手前から奥へ下った
トリッキーな名物ホールで生まれた。大会中、選手の間には、そのホール
の攻略法は小さめのクラブで手前から攻めろという"合い言葉"。さくら
は戦術にあくまで忠実にいったのである。しかし、20センチに寄るとは。
結局、この2連続バーディが横峯を優勝者にし、賞金レーストップの諸見里
をも抜き去ることにつながったのである。

 表面的にはラッキーな2連続バーディ。それはコースの特徴と選手の
相関関係となって様々なことを変えた。
 コーライグリーンは選手を疑心暗鬼にしていた。強い芝目、南国の太陽
に育まれたグリーンはあくまでタフだった。ショートパットでも大きな
カーブを描いた、かと思うととんでもなくショートした。逆目、順目が
入り組み横からのパットの曲がりの読みとタッチに選手の頭は混乱の極に
達した。
 そのことによるパニックは横峯以外の選手に重くのしかかったのである。
飯島はバーディチャンスを逃し続け、やがて短いパーパットすら入らず
後退した。諸見里は15番でグリーンを外し、ショートパットはカップに
嫌われボギーとした。

各選手がコーライグリーンに手こずる中、横峯だけが快調にスコアを伸ばせたそのワケは?
 
 
 

 横峯だけが生き残ったのだ。それはなぜか?
 トーナメント終盤の2つの難ホールでパットをしなかった。バーディは
チップインバーディと"オーケー"バーディ。コーライの神の意地悪は、
この日のさくらには及ばなかった。これを"運命のいたずら"と呼ぶ。

 

ボールは当てるのではなく、狙った所に打つ
昔のセオリーと全く違う現代っ子ゴルファー

 

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年頭の公約通り賞金女王に輝いた横峯さくら
 
 

 さくら、しのぶ、茜に加え宮里藍、美香、上田桃子らは1990年を境に
生まれた10代から20代の若い選手たちである。ドライバーが木製
(パーシモン)だったことは知っていても、実際に物心ついた頃はメタル時代。
 技術も変わればコースもグリーンもどんどん様変わり。さくらにしたって
「気がついた時はボールを打っていた」「ボールは狙った所に打つものだ、
当てようと思ったことなんか一回もない」という。遅くからゴルフを始めた
レイトビギナーたちは"ボールをしっかり見ろ""ヘッドアップするな"と
当てることばかりやってきた気がするが、世代が違うと全く違うゴルファー
が誕生している。石川遼なんてほんと、地球人なのかと思う。

 そんな中のコーライグリーン。女子ツアーの最終戦で生き生きとその存在
を誇示して、若い選手にカツを入れたような気がする。世界に追い付き追い
越せと世界を目指す日本は、ベント仕様のグリーンが不可欠で、いま日本中
を覆ったが、好ゲーム連続の女子最終戦を突きつけられると、コーライを
改めて考え直したくなったものである。

 優勝者にして女王となった横峯は2009年、34戦中33戦に出場した。
そして2010年は海外飛躍を誓った。さくらを変えたコーライグリーンの
次なる人生を待つものは一体、どんなサプライズになるのだろうか。

写真はalbaより

 

 

◇武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。
報知新聞社運動部、編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントの
テレビ解説、コラムなど幅広く活躍。日本プロゴルフ協会(JPGA)
理事、日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会委員、世界ゴルフ
殿堂選考委員。1939年11月、東京生まれ。

 

Date:2009.12.31 Category:コラム