石川遼が「ザ・ロイヤルトロフィー」で始動する。2011年、石川の始動はタイでの国別対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィー」。アジア選抜と欧州ツアー代表12人同士が3日間、マッチプレー形式で競う、ツアーの威信をかけた争いだ。
文:武藤一彦

ゴルフの2011年の開幕を飾るアジア対欧州ツアー対抗戦
「ザ・ロイヤルトロフィー」はアジア選抜が最終日にまさかの
大逆転負けで終わった。
2日間を終わって6対2と断然リードして迎えたアジアは、9日の最終日、
個人戦8試合のうち2・5ポイントを挙げれば優勝という優位に立ちながら
8戦で誰も勝てず、2引き分け6敗と完敗、欧州選抜に大逆転された。
アジアには石川遼、池田勇太、薗田峻輔と3人のフレッシュトリオを
送り込み必勝を期した日本だったが、3人揃って最終日は完敗した。

ゴルフはこれがあるから難しい。「朝(あした)には紅顔ありて夕べには
白骨となる」の諺のごとく、好スコアの喜びは長く続かず、大きなミスは
深い傷となる。
タイの首都バンコクから南へ200キロのリゾート、ホアヒンのブラック
マウンテンゴルフクラブは思いもしない展開に沸いたに違いない。
絶対優位のアジアが不振で次々と欧州が勝ち名乗りを上げるドラマチック
な幕切れが現出したのだ。
シングルマッチの8戦でアジア勢は誰も勝てず、なす術もなく敗れ去り、
尾崎直道主将は「勝てると思い込んでいたとは思わなかったが、負ける
とも考えていなかった。こんな負け方は私の責任」とうなだれた。
1日目は2対2のイーブン、2日目はダブルス(4ボール)で4戦4勝の
6対2と大差をつけたアジア。最終日、シングルマッチを2勝1分けならば
2年ぶり2回目のタイトル奪回となるチャンスだったが、タイトルは
逃げて行った。
気の緩みはなかったか。おごり高ぶっていなかったか。チームの誰の心にも
悔恨の思いが立ち込め、敗戦は現実の結果として残った。


石川遼は自滅、玉砕した。気の毒だが、チームの敗戦を象徴する存在と
なった。それは“批難の矢面に立つに十分の活躍”と皮肉でなく言って
いいほどのゴルフの乱れだった。
日本勢はチーム3番手に池田、4番手に石川、そして5番手に薗田と
前半で勝負を決める布陣を敷き、勝利の瞬間、男の花道を3人のうちの
幸運児に割り当てる、そんな演出も見えた。
だが、この日の石川にはスタートから主役を務める要因は一つも見えなかった。
ドライバーショットがスタートから曲がった。アイアンの距離感も合わず、
グリーンの読みもタッチもすべて悪かった。すべてはドライバーショットが
原因だ。
第1ラウンドから不安があったが、最終日は左右に大きく散った。2番、
12番と池に打ち込んだ。11番パー3は4アイアンのショットが右の池に
水しぶきを上げた。
“おかしい”“どうしたんだろう”ドライバーの引き出す不安要素が集中力も
そぎ落としていった。
前日まで好調のパッティングも、読み、タッチとも別人となった。
「切り返しが不安定だった。フェアウエイから打つ重要性を知った。
そうしたことが分かったことが収穫。でも悔しい」
バックスウィングから切り返すまでのタイミングのずれにドライバー、
アイアンとも一定感がなかった、と悔やんだ。ショックは大きい。特に
数年間、取り組み、やってきたこだわりのドライバーショットへの自信が
瞬時に断ち切られた。そんな経験を何度か繰り返しながら、またも突き
当たった壁に唇をかんだ。
大事な国別対抗戦の戦いで出てしまったショットの不振、国のために
結果を出せなかった悔いは何より辛い。取り戻すことができない大きな
収穫を放り出してしまった。周囲と自分自身への期待を重く受け止め、
エネルギーに変える果てしない石川の戦いがまた始まってゆくのだ。
2006年から5回開催の「ザ・ロイヤルトロフィー」(08年はタイ国王
逝去のため開催せず)。対戦成績はこれで欧州が2連勝し4勝1敗。
過去5回の内でも今回ほどの逆転劇は初めて。
欧州のコリン・モンゴメリー(スコットランド)プレイングキャプテンは、
その勝利を「ミラクル!」奇跡だ、と受け止めチームを称えた。

世界ランキング上位者で固めたアジアに対して、41位のピーター・ハンソン
(スウェーデン)がエース。対抗戦開始直前にエドアルド・モリナリ(伊)、
トーマス・ビヨン(スウェーデン)を故障で欠いた不運を克服しての史上に残る
ドラマチックな大逆転は、対抗戦の面白さ、怖さをゴルファーたちに改めて
見せつけてくれた。
日本は健闘空しく敗れたが、そんな底力を秘めた欧州勢を2日目までとことん
苦しめて存在感があった。
最終日の悔しさを晴らすべく、よい薬となったと受け止め、今後に生かしてこそ
よき敗者(グッドルーザー)となる。精進を重ねてほしいものだ。
写真は GDO より
http://www.golfdigest.co.jp/magazine/
武藤 一彦(むとう かずひこ) ゴルフジャーナリスト 評論家。報知新聞社運動部、
編集委員、専属評論家を経て現職。トーナメントのテレビ解説、コラムなど幅広く活躍。
日本プロゴルフ協会(JPGA)理事、日本ゴルフトーナメント振興協会メディア委員会
委員、世界ゴルフ殿堂選考委員。1939年11月、東京生まれ。
Date:2011.01.11 Category:リポート